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タカは家族と共に市営団地に住んでいる。団地行きのバスの時刻表を確認した。地方では土日のバスの本数が極端に少ない。人気のないロータリーを見れば、それは納得出来るのだった。
「くそっ。三十分も待つのかよ」
俺は時刻表を蹴り上げ、駅構内の自動販売機に向かった。
停留所に併設されている木製のベンチに腰かけ、冷えた缶コーヒーを額に当てる。心地好い冷たさが全身に伝わっていく。缶に浮き出た水滴が額から鼻筋を伝う。
雲の切目から覗く青空は確実に大きく広がり、町に太陽が照り付け始めていた。うんざりしながら空を見上げ缶コーヒーのプルトップを開けた。
バスがロータリーに姿を見せたのはそれから三十分後で、同時に駅の構内から電車の出発のベルが鳴った。
出発時刻の五分前に現れたが何時間も待たされたような気がした。たった三十分で煙草を五本も吸ってしまっていた。咽が痺れる様な感覚がする。気持ちが悪かった。
乗客は俺と駅の改札口から小走りでやって来た初老の男だけだ。車内は冷房が過剰なほど効いていて肌寒いほどだった。シートに腰を下ろすと頭上にある冷房の通風孔を全て閉じた。
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