第一章 記憶に残る赤いナニカ

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辰海は町中を歩いていた。時折目につく親子連れを見て、なぜか胸が締め付けられる。 「パパー! 明日遊園地いこうねー!!」 「あぁ! だから今日は早く寝るんだぞ?」 「はぁ~い」 自分は誰かのお腹から産まれてきた人間ではない? だから両親の顔が思い出せないのではないか? 辰海は時々、両親の顔を思いだそうとする。だが、なぜか思い出してしまうのは真っ赤なナニカ。 真っ赤なナニカの中で両親が悶えている。勿論、顔など見えない。 「俺は、俺は……」 頭を抱えながら自宅へ向かった。 「おかえり、辰海ちゃん」 出迎えてくれたのは叔母。この叔母は辰海の父の妹に当たる人物である。 「どうしたの? 何だか、顔色があまり良くないみたいだけど」 「いや、何でもないよ」 叔母と適当に会話をし、自室に入って鍵をかけた。
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