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「クローン人間を造ることは禁じられている筈。なら俺は、誰かから産まれた正真正銘の人間……なのか?」
誰かが書いた論文を見ながら辰海は呟いた。なんでも、人間のクローンは簡単に造れるらしい。だが生命倫理などの問題により、固く禁止されているのである。
「じゃあ、やっぱり俺にはいるんだ。父さんと母さんが……」
記憶に残る赤いナニカの中にそれはいた。顔も覚えていない両親の声が、ふいに――。
辰ちゃん? 辰ちゃんなの?
おお辰海、大きくなったな。
「母さん? 父さん?」
ぶくぶく。それは赤いナニカに飲み込まれた。始めから存在しなかったかのように、何もかもが消えた。
その時、ノックする音が聞こえた。辰海は鍵をあけドアを開けると、そこに叔母が立っていた。
「辰海ちゃん、絵とか好きだよね? 明後日の日曜日、ここで展覧会があるんだけど良かったらどう?」
叔母の手に細長い長方形のチケットが握られていた。そこにはこう書かれている。
“神々しい絵画の数々が貴方の日常を変える。有名画伯の作品を多数出展!!
開催日 〇月〇日。
開催場所 碧蒼館展覧会場。
開催責任者 葵画伯。”
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