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俺、霊感があるんだよ。
明人は付き合う前に、私にそう言ったことがあったが、霊などの存在を信じない私は、
ふぅーん
と流し、明人もあまり詳しくは話してこなかった。
しばらくして付き合いだし、何回目かのドライブデート。
明人が運転、私は助手席。他愛もない会話で盛り上がっていた時のこと。
しばらくして私は、途中からいつの間にか自分ばかり話している事に気付いた。
明人の返事がどんどん適当になっていく。「ふーん」「そうなんだ」「へぇー…」上の空という感じ。
私は流れゆく景色ばかり見てたが、様子がおかしいなと、初めて明人の方を見た。
明人はチラチラと、前方とルームミラーとサイドミラーと、視線を激しく行ったり来たりさせながら運転していた。顔は険しい。涼しいはずなのに汗をかいている。
え、何…!?
話かけたいが、その気迫に圧倒される私。
明人はどんどんアクセルを踏みスピードをあげていく。
まるで、追ってくる何かから逃げているようだった。
何かって…何?
明人はミラーをちらちら見る。
チラチラチラチラチラ…
そしてアクセルを踏む。踏む。
私は思わず後ろを振り返った。何もいない。自分側のサイドミラーを見る。何もうつってない。
けど、明人の様子は変わらない。
チラチラチラチラチラ…
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