ドライブ

3/3
39人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ
それがしばらく続いたが、ふっと明人の目がミラーではなく前方に固定され、表情が和らいだ。スピードも落とす。そして私に 「どうしたの、いきなり黙っちゃって」 と笑いかけた。 私は、いきなり黙ったのは明人の方じゃない…と思いながら、 「まさか…何が見えた"?」 と冗談めかして聞いた。明人は、 「何が?何もなかったよ」 と笑顔で返した。 明人は急にいつものように饒舌になった。 「何の話してたっけ…あ、動物園の話だったな。でさぁ、俺レッサーパンダがどうしても見たくて。ほら、なんだっけ有名なあいつ…えっと…」 明人は前方から目を離さずに話し続ける。 「あ、それそれ風太くんだ。あれみたいに立つかなぁって思ってさ。んでレッサーパンダはいたけど、どうだったと思う??立ったと思う??」 私は寒気を感じた。 「ぶー!!残念な事に立つどころか、ずっと寝てやがって…」 楽しそうに話し続ける彼。 誰かと。 私はさっきから怖くて、一言も口を開けずにいた。なのに明人は会話を続けてる。誰かと…誰と? 私は霊なんて信じない。いるはずない。 けど、ルームミラーを見た。 気のせいだと思いたいが、 髪の長い、知らない女がそこにうつっていた。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!