配列と侮辱、強弱

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「だから、あなたには抗体がある」 頭が働かない。 何を言っているのだろう。 視界が悪い。 意識の強弱が激しい。 ここからは出られないのか。 時系列がわからない。 今は何だ?配列がバラバラだ。 あの金属棒のように。 「ここで話ができたのはきっと奇跡みたいなもの。どうしてだろう。わからないけど、良かった。 どうしても伝えたいことがあったから」 なに? 「目を覚ましたらあなたは私の事を忘れていると思う。 けどいいの。私は忘れないから。けれどもし」 なに?聞こえない。 「ありがとう、雄梧。 …おやすみ」 名前。 …オヤスミ。 その時、世界から 大切な暖かさが失われるのを感じた。 僕の世界は熱を失い、色を変え、形を歪めて留められた。 けれど気付くことはない。 同時に僕の身体と意識は一本の細い糸のように収束され、紡がれ、どこか別の世界で繭のようなものを作り出した。 しかしそんな事はどうでもよかった。 失われた、大切だったはずの何かの事が気になってしかたなかった。 トライアングルコード 上 終わり 2007年3月~2009年9月著
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