・朝の違和感と消えた弟

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目を覚ますと僕は見覚えの無い部屋にいた。 いやここは…確かに僕の部屋だ。 しかし部屋の持つ雰囲気が違うし、 なにより部屋を埋め尽くしていたはずの楽器や機材が見当たらない。   薄暗い中でもそれくらいはわかる。 僕は混乱した。 違和感が体に纏わり付いた。   起き上がって軽く体を動かしたが筋肉痛のような痛みを感じ思うように動かせなかった。   昨日は香織と遅くまで飲んではいたが激しい運動はしてはいないはずだ。   …頭が痛む。 それに目が霞んでよく見えない。   まるで別の人間の体に意識だけが入り込んでしまったみたいだ。 …そんな事はあるはずがない。 数秒前の自分の考えを幼稚だと思いながらベッドから出てカーテンを開いた。   光が入ると、部屋はますます異様に見えた。 ここにいてはいけないような気さえしてくる。   まだ視界はかすんでいる。 部屋からはとにかく物がなくなっていた。 楽器の他に 壁に貼られた写真、 ポラロイドカメラ、 デジタルビデオカメラ、 数百枚とあったCDやレコード、 オーディオにスピーカーまで。 そしてそれらに代わり、 部屋の角にはブラウン菅テレビが置いてあった。 僕はテレビを部屋に置いていなかった。 苦手なのだ。 …僕はますます混乱した。 気を落ち着かせるために軽く頭を振り、 手の平を見てそこに意識を集中させた。   ライブの前にはいつもこうする。 いつも通り、自分の気持ちが落ち着いていくのを感じた。   試しに目を閉じると、 先程まで見ていた夢の残像が意識を震わせた。 それがここは現実なのだと訴えかけてくる。    一体何があったのだろう?   僕は手を見るのを止め、もう一度部屋を見回した。
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