・どちらにせよ僕には

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「着た?じゃあついて来いよ」 と男は言った。 「ゴンドラに乗るの?」 と僕は聞いた。 男はそれには答えず、僕を見てから無言ではしごを登った。 彼の後に続いてはしごを登ると下の応接室とは違い、普通のオフィスのような部屋に出た。 机が何台か並んでいて、そこには女性が二人と男性が一人いる。 何らかの仕事をしていたようだ。 3名はこちらを見てはいるが、言葉を発する事はない。 しかし彼らの表情にはみなどこか好意的な雰囲気があった。 男はすでに部屋から出るところだったので、僕は急ぎ足でドアに向かった。 ドアを出ると男はエレベーターの中から出てきた。 何をしていたのだろう? 続いて隣のエレベーターに入り、ボタンを押す仕種をするとまたすぐに出てきた。 わざとらしいくらいに無駄のない動きだ。 「先に階段上ってろよ」 と男は言った。 階段?エレベーターは使わないのだろうか。 そうか、エレベーターを使えないように何か細工をしているのかもしれない。 「屋上?」 と僕は聞いた。 男はやれやれ、といった様子で 「他にどこに行くんだよ」 と言った。 やはりゴンドラだろうか。 それにしても偉そうなやつだ。 僕はエレベーター横のドアから中に入り、階段を登った。 屋上まで行くとなると、残りはビル全体の5分の1くらいはある。 僕は昔やったことのあるロールプレイングゲームを思い出した。 ビルの正面口から入ると敵に見つかるので、延々階段を上り続けるのだ。 …追い付かれるのは気に入らない。 無意味なプライドが僕を駆り立て、僕はかなりのハイペースで階段を駆け上がった。 身体はかなり軽い。 筋肉痛はもうほとんど残っていないし、 頭痛も消えている。 これなら追い付かれる事はないだろう。
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