276人が本棚に入れています
本棚に追加
フェンスをくぐるとその先には、
小さな段差があるだけで
僕は足から力が抜けるような気がした。
その先は何もない。
晴れた空と、雲だけだ。
小林は丸太のようなビニールの中から何かを抜き取るとそれを広げ始めた。
嫌な予感がした。
正確にいえば、すぐに予想はついた。
しかし気付きたくなかった。
また足から、今度は背中の方まで力が抜けた。
思った通り、小林は布のついた骨組みとエンジンを合わせて
パラグライダーのようなものを組み立てた。
それから小林は近くの物置のようなところに入ると、プロペラのようなものを持ち出してきた。
間違いない。
これで、ここから飛ぶ気だ。
スムーズにプロペラが取り付けられると、エンジンが音を立てて鳴り始めた。
「よし、行くか」
と小林は言った。
いやだと言ったらどうなるだろう、と僕は考えた。
しかしどちらにせよ僕には選択肢などありはしなかったのだ。
この時も、これからも。
最初のコメントを投稿しよう!