終演と過去

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彼がそれに気付いたのは ライブに珍しく友人が来た時だ。 友人は言った。 「お前さぁ、今のままでいいの?」 「このまま続けて何かなんの?」 「コピーやってたお前の方がかっこよかったぜ。」 気付きたくなかった。 否 気付いていたのだ。 ライブをやるだけならどんなバンドでもできる。 だが、「このバンドでしかできない」 「このバンドにしかできない」 そんな魅力を持ったバンドでなければ やる意味なんてなかった。 仮に彼がライブをやるだけで満足するならば あるいは、このままでも良かったのかも知れない。 だが、彼はそれを拒んだ。 「コピーでもライブはできる。 オリジナルはその先をしなければ。」 そう彼は思った。 思ってしまった。 そして彼はバンドを抜けた。 それが正しい道だと信じて。
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