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真っ暗な闇の中、一人の少年が、岩のように地面に突き刺さった瓦礫の上に座りながら、ポケットから取り出したタバコを口にくわえる。
左手に持った、十字架の模様が刻まれた、銀色のジッポライターを使い、タバコに火を点けた。
ふー……と煙を吐き出し、空を見上げる。満天の星空で、この荒廃した世界で少年が唯一美しいと思える光景だった。
「黄金郷、か……。一体どうすれば見付けることができるんだろうな……」
少年は夜空を見上げたまま、ぽつりと呟く。この呟きに答える者はおらず、ただ少年の声が闇へと呑まれ、消えた。
短くなり、灰へと変わったタバコを捨て、足で踏んで火を消す。少年は岩から下りると、置いておいた自分の聖書を取る。
「まあ、文献に記されている以上はあるんだろうな……。とりあえず、俺はいつもと同じように生きるとしよう」
そう再び呟いた少年の表情は無表情。何の変化も見られず、目の奥にも感情すら見えなかった。
少年は新たなタバコを取り出してくわえ、ライターで火を点けると、煙を吐き出しながら、身に纏う黒衣を翻して歩き出す。
その少年が座っていた瓦礫の周りには、まるで分解されたマネキンのように、血で染まった、おびただしいほどの数の肉塊が転がっていた。
少年は、まるで闇に塗りつぶされるかのように、闇へと消えた──。
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