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「なぜ、私とお見合いをしようと思ったんです?」
ケーキを目の前にして砂衣は紅茶、怜斗は珈琲をたのみ仕切り直し。
「私が砂衣さんに一目惚れしたんですよ。」
怜斗が珈琲をブラックで飲みながら言った。
「その時は名前も何も解らなかったんです。あなたがそこにいたのは多分偶然だったのでしょう。毎日同じ時間に行っても会えませんでした。」
コップを置いて、砂衣に視線を向けると真剣な眼差しで続けた。
「しばらく通ったのですが、だめでした。諦めかけてた時、部下の失敗で出掛けた先からの帰りに見つけたのですよ。」
「嬉しかったですよ。抱き締めたかったです。」
ニコッと笑うと、また珈琲に口をつけた。
「無論。そんなことはできませんが。あなたの名前と通っている学校がわかりました。」
砂衣は怜斗の仕草一つ一つに釘付けになり、彼をジッと見ていた。
「後は簡単ですよ。あなたを調べて父に婚約を頼んだんですよ。」
「賭では…遊びではないのですか?」
怜斗はその言葉に眉を寄せる。
砂衣は機嫌が悪くなると思い、知らず知らず身を強ばらせた。
「何故、賭けだと?」
冷たい視線を砂衣に向け、声を低くして言う。
「えっ…その……。」
砂衣は怜斗の視線に耐えきれず俯いてしまった。
なっ…なんで怒るの?
違うんなら、違うって言えば良いじゃない!
二人の間に無言の時間が流れると、ため息を一つつき怜斗が口を開いた。
「賭でも罰ゲームでもありません。砂衣さんが好きで付き合いたいからお見合いをしたんです。」
怜斗の言葉に俯いていた顔をあげ、じっと見つめた。
視線と視線が絡み合い、お互いその視線を外すことなく見つめ合った。
「解りました。失礼なことを言ってすみませんでした。」
砂衣は怜斗に何かを感じて、頭を下げた。
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