694人が本棚に入れています
本棚に追加
泣きたかった。
とにかく泣きたかった。
理由なんて今はない。
何にも考えずに涙が出るのを止めずにいた。シャワーで泣いて髪を乾かしながら泣いてベッドで泣いてそのまま寝てしまった。
携帯の存在なんて忘れていた。
朝起きると頭がガンガン痛い。起きあがるのもおっくう。
それでも起きなきゃ。お腹が空いた。
ベッドから立ち上がって鏡を見ると、目が腫れていた。
自分じゃないみたい。
自嘲気味に笑うと机の上におにぎりとお茶、ポカリスエットが置いてあるのに気が付く。
お母さんが置いてくれたんだ。
親の気遣いに感謝し、それらに手を合わせるとおにぎりを食べ始めた。
おいしい…。
たくさん泣いて少し楽になったような気がする。
3つあったおにぎりを平らげお茶を飲むと気持ちが落ち着いてきた。
私が向こうに何かしたとしても、この仕打ちは酷いよね?
ポカリスエットに手を伸ばすと蓋を開け一気に飲む。
何か…体に染み渡っていくみたい。
どんだけ泣いたんだよ。
はぁ~。
ため息をつくと、おにぎりののっていたお皿をおぼんごと持って部屋を出た。
「会わせてください。」
階段を降りていると気が付いた。
誰か来ている。
足を止め、耳を澄まして玄関であろう話し声を聞いてみる。
「昨日のことを話したいのです。」
!
怜斗さん?
「娘はまだ寝ています。お帰りください。」
「待たせて下さい。」
「お帰りください。」
「会わせてください。」
「娘はまだ寝ています。お帰りください。」
「待たせて下さい。」
「…浅葱さん。
昨日娘が帰ってきてから話をしていません。何があったかは知りませんが娘が会うと言うまでは家に上げるわけにはいきません。お帰りください。」
お母さんは怜斗さんを真っ直ぐ見るとそう言い玄関のドアを閉めた。
.
最初のコメントを投稿しよう!