31人が本棚に入れています
本棚に追加
腰まで伸びている艶やかな髪はまるで墨が流れているようだ。クリッとした円らな瞳も黒く、学校指定の制服、黒のブレザーに赤いチェックのプリーツスカートがよく似合う。頼太は世の中、こんな美少女が居るのか、と感嘆した。
「…え、と…。」
その美少女に、お菓子研究会の事を話すと、頼太は笑われた。
バカにされたのかと思い、いじけていると、背中をバシバシと叩かれた。
「バカにしたんじゃないわよ。今時そんな部があったんだぁって思ってね。」
「あ、そうなの。」
少し涙目になっている頼太は、さっき美少女に叩かれた所が地味に痛かった。
「ねぇ!成宮くん。」
「あれ。俺、名前教えたっけ?」
「ちょっと!同じクラスでしょ!」
そうなのか。それは失礼な事をしたな。と思うが、こんな美少女が自分のクラスに居たのかと少しばかり驚いた。
お菓子研究会に入る事に夢中になっていた自分を、頼太はなんだか情けなく思った。
「私、露木亜子(ツユキ アコ)よ。」
「へぇー。」
そういえば今日は確か、クッキーを持ってきたはずだ、と思いながら、亜子にヘラっと笑いかけると、頼太はカバンの中身を荒らし始めた。
最初のコメントを投稿しよう!