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「何?」
「あ、あった。」
頼太の手に乗っかっていたのは、綺麗に包装された手作りのクッキーだった。
「あげる。」
「はい?」
「俺、お菓子の事少しでも勉強したくって、この高校入ったんだけど、意味なくなっちゃったみたいだし、もうすぐでここ退学すると思うから、記念に。」
ヘラリと頼太が笑えば、亜子はすこぶる機嫌を悪くして、クッキーを奪う。
「バカじゃないの?死ぬ思いで、ここに入学した癖に、お菓子研究会に入れなかったってだけで、退学するわけ?」
「だって俺、パティシエになるのが夢だから。」
「だからって…!」
未だにヘラヘラと笑顔を浮かべる頼太に怒る気も失せた亜子は、肩を落とした。
「…だったら、調理部でも作ったら?入れないんなら作ればいいじゃない。」
クッキーの包装紙を開けて、一つ指で摘むと、亜子はそのまま口の中に放り投げた。
どうせ、そんな大したものじゃない。そう思っていたのだが、思っていたよりも、そのクッキーは美味しかった。
「そうか。じゃあ、俺作るよ。調理部。」
アッサリと認める頼太に、今度は亜子が吃驚した。
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