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速球が次々と当てられていく彼の手足や顔には痣がある。
見てられなくなった亜子は、ドアを背にうずくまる。
「イジメられてる奴ー、湯沢太一(ユサワ タイチ)っていうんだけどー、奈々の彼氏なのー。」
黒い髪で顔を隠してはいるが、よく見れば手足には筋肉が付いていて長身だ。
「奈々はー、太一を助けたい。」
「わかった。」
「はい!?」
あっさり過ぎる頼太の言葉に素っ頓狂な声を出す亜子。
唖然としている亜子と奈々をそのままに頼太は、黒いブレザーを亜子に持たせ、紺色とグレイのストライプのネクタイを奈々に持たせ、Yシャツの袖を捲る。
「ちょーっと行ってくる。」
「待ちなさいよ!相手は仮にもバレー部よ!?」
「バレー部はバレー部でも弱小バレー部。まぁ、見てて。」
ヘラヘラとした笑顔が一転して真剣な眼差しに変わる。
堂々とした頼太の体に、運動部並みの筋肉が付いてるとは思えないぐらいに華奢だ。
どう見たって勝ち目がない事はわかっているはずなのに、頼太は真っ直ぐと太一の元に行く。
「バレー部のみなさーん。湯沢さんイジメないでくださーい。」
「なんだテメェは。」
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