金色の毛並みをした、腹黒い兎に御注意を

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見えるのは、果てしない無限の大空。天から雨のように舞う、桜の花びら。 僕は学校の屋上にいた‥錆臭いフェンスの向こう側。あと二歩も後退りをすれば‥グラウンドではなく、何故か大空に堕ちていく。 グラウンドに落ちようと、大空に堕ちようと‥どちらも僕には同じことだけど。 ふと、お前の声が聴こえて‥僕はフェンスの向こうにいる、お前を見つめた。いつもと同じ弧を描く口元‥何故お前の口元しか見えないのか分からないけれど、今はどうでも良い。僕の夢の中ですら、お前は笑うんだな‥‥実に不愉快だよ。 僕に手を差し伸ばすお前。僕はお前の手に、手を伸ばしかける‥でも躊躇してしまった。 ――だって、お前の色に染まるのが怖いから。
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