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言えるわけがない、と心の中で亮司は笑った。
ずっと杏奈といれますように、だなんて人様に言うことではない。
ましてや本人になんて論外だ。
「このあとどうするの?みんなで遊ぶとか言ってたけど」
「あたしは帰んなきゃいけないんだ。まだ…みんなと遊びたかったけど」
杏奈は淋しそうな顔でそう言った。
亮司もそれ以上は何も言わなかった。
きっと家の都合か何かだろう、と考えていた。
よく考えれば、このときから杏奈はそうだった。
何かと理由をつけて、長く遊ぶことから避けていたような気がする。
でも、その理由を知ったのはまだまだ先のことだった。
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