夜空に歌、儚げに

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心は焦り、時折声を見失いながらも確実に声に近付いていく。 生と死の平行 秤にかけて平等 精神は生に傾き 死は哀れまれ 生には知を 死には理を … 初めて聞く歌。 何の歌なんだろう。 僕はビルの間を縫いながら行くと、急に景色が開けた。 公園である。 「あっ…」 女の子だ。 歳は15~17くらいだろうか。 公園の噴水に腰掛けている。 海色の瞳と胸元まで伸びた頭髪が月光を反射し、美しい。 「人間…?」 息が上がっている僕に対して、女の子は至って穏やかに近付いて来る。 「やっと…」 やっと…以外に言葉が思い浮かばずにオロオロする僕。 「貴方も、可哀相…」 澄んだ歌声とは違う冷たい声。 女の子の目は哀しみを帯びている。
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