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学校についたところでおじいさんになった僕を追い越した。あったかくなってきたからお散歩してるのかな。隣をいっしょに歩いてるおばあちゃんは誰なんだろう。幸せそうな二人の後姿を追い越すときにちょこっと目があう。これからの人生なにがあっても安心していいよ、どうなっても最後は結局誰かといっしょに年をとってこうやって散歩をしているんだよっていうやさしい目だった。
それから一日家に帰るまでにいろんな嘘に出会った。
夢を持って毎日売れない絵を描きつづけてる僕。今の僕を見てなんだか少しうらやましそうな、哀れみをもったような目でみつめていた。
小学校のころに転ばなかった僕。運動会のリレーで1位をとる直前に転んだあのとき。あそこで転ばなければ人生がすべてうまくいくんだと思っていたけれど、出会った僕は特に今と変わってはなさそうだった。
背の低い僕、月を見ても何とも思わない僕、母親のいない僕、会社につとめて毎日忙しく走り回ってる僕とかね。
毎年何十年分も疲れる日も終わり、すっかり暗くなった道を家に帰ってたら誰かに呼び止められた。
迷子になって泣いてるのかな、ちっちゃい頃の僕だった。
いっしょに帰ろうよと、手を引いて歩いてあげる。いっしょに歩いていろんなお話をしてあげた。これからいろんなことが待っている人生。いろいろな人と出会い、別れ、また出会ってゆく。泣きたくなることもあるけれど、そのときそのときを精いっぱい生きてれば、君の人生はずっと幸せなんだよって。
あんまり分かってはなさそうだったけど、ちっちゃい頃の僕はそれでも泣きやんで話を聞いてるようだった。
そういえば20年ぐらい前の4月1日にこんな風に手をつないで歩いてくれたお兄ちゃんがいたなってふと思い出した。
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