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「郭邑様。報告が入りました。甲応城城主姜遼が隴竺の部隊と共にこの石婁郡へと向かっている様子。姜遼軍は約二万。隴竺軍は約三万で向かっているようです」
ある晴れた昼。
萪圏の典主城城主郭邑の下へ一人の家臣が入ってくるとこう告げた。
身なりなどから文官だと言うことが見て取れる。
「ふむ…。子明よ。隴竺が我らの下へ下ると言う話は真であろうな?」
「はっ…。阿備城老師潘符を連れて下るとのことです」
文官は頭を下げた。
典主城文官宗雲。
字を子明と言い、若くして郭邑の側近中の側近と言われるほどの実力を兼ね備えた文官であった。
「では…敵は姜遼軍の二万…。我らの敵ではないな」
「はい。ですが、姜遼軍は防衛に長けた軍。それに一騎当千と言われる将、郭常もおりまする。数が少ないとはいえ油断はなりません」
「では子明よ。この戦、お前はどうする?」
「私ならばまず囮部隊を姜遼軍と交戦させましょう。その隙に本隊は南下するのです」
「城攻めをするつもりか?」
「はい。ただし姜遼の甲応城ではなく隴竺の阿備城でありますが。そして阿備城を落としたあと、背後から姜遼軍を突くのです。隴竺が抱えている兵の数から察するに阿備城は手薄。陥落は時間の問題でしょう。そして阿備城の城下を我が物とするのです。潘符がこちらへつくこと、阿備城の陥落、姜遼の戦死となれば益圏は我ら萪圏の敵ではありませぬ」
「ならばそのようにしよう。萪圏の城主たちにその事を伝えよ。これから我らは阿備城と姜遼軍を攻める。よいな?」
「はっ!」
控えていた郭邑配下の部下が一斉に頭を下げ、すぐ各自の持ち場へ散って行った。
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