高校1年生 ―4月―

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4月。入学式。 ―――――――― 私は夏川怜。 今日から高校一年生。 憧れのこの高校に受かったのは奇跡に近い。 なんてたってこの高校は県内屈指の進学校。 本を読むことが好きだから、国語の成績だけは自信あったけれど。 高校までは家から自転車で片道30分。 運動神経よくないし自転車って苦手。 通学中スカートの裾を気にしなくちゃならないし、せっかく早起きしてブローした髪がぐちゃぐちゃになってる。 『あーっ、もうこんな姿誰にも見られたくないよ』 って思ってるのに…… 『なに? 信号待ちのバスの中から、こっちを見てる人がいるんですけど?』 知らない男子。 でも同じ高校の制服。 私が見ると視線をそらした。 『気のせい? 私って自意識過剰かな』 校門をくぐり自転車を停めて、乱れた髪を撫でながら昇降口に向かう。 昇降口に張り出されたクラス表を見ると1組だった。 上靴に履き替え教室へ向かおうと廊下の門を曲がった時、『ドン!』と男子にぶつかり転んでしまった。 「ごめん。大丈夫?」 と差し伸べられた手は、さっきバスに乗っていた男子だった。   これが『あの人』との最初の出会いだった……  
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