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「んー、……」
ゆっくりとのびをした○○ ○は、教室の窓から赤々と燃えてる太陽を覗いた。
運動部の話し声や、明るい声がざわざわと○○ ○の耳にすべりこんでくる。
誰もいない教室で彼女は、ただボーっとしていた。帰ったとしても、何かと五月蝿い「家庭」があるだけの家を○○ ○は嫌っていた。「干渉される」、という行為や好意が嫌いな彼女は、誰もいない、切断された空間に似たものが好きだった。それが、ただ、今の教室に当てはまったので彼女はそこに居た。
「寒い。」
ただ、真冬にそれはすこしこらえた。
今まで支えてくれた太陽だって、もう帰り始めて、寒さは一層彼女に巻きついた。
「あっ、」
ガラリと、切断された空間が再接続された。制服をきていた女の子に。
「○ちゃん、ちょっといい?」
ハッ、としてそれが私の名前だと気づいた。たいしていつも話さない子に急に話しかけられたのだ、多少の疑問を抱く。
「何?」
スルスルと机と机の間を歩いて、彼女は○○ ○の目の前に可愛らしい顔をして、立った。椅子に座っていたため、○○ ○は少し見上げる体勢となった。
「あのね、これ食べて」
ズイッ、と、可愛らしくラッピングされた、ピンクのハートの箱を渡された。鼻先約五センチにこれは辛い。
しかも、急に渡されても困る。
困惑に疑問を残した○○ ○は、いらない、と話した。
「お願い、食べて」
赤いラッピングのリボンを解き、パカリ、と箱を開かせば、クッキーたちが顔をのぞかせた。甘い匂いが○○ ○の鼻をくすぐった。
「いいよ、私いらない」
丁寧に両手で箱を押し返した。
「お願い、食べて」
それより強い力でまた前に出される。
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