5人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
授業がおわって、充が雪乃をひっぱって歩く。その様子を見たクラスメイトがざわつく。でも、いまはそんなことにかまっていられなかった。早く雪乃に笑顔になってもらいたい。
(今、俺にできることをやるしかない!)
しばらく歩くと雪乃の歩くスピードが遅くなっていく。辺りを見渡すと、雪乃には見慣れた景色が並ぶ。
「吉村くん…?」
不安げな声で雪乃が声をかける。充は何も言わず歩いていく。ふと立ち止まった場所には大きなマンションが建っていた。
「よしむらくん……。」
どんどん足が進まなくなる。充は無理矢理歩かせて、1103号室で足を止める。
充がインターホンをならす。
「吉村くん、私…。」
泣きそうな声で何かを訴えようとしていた。
ガチャッ
ドアが開いて、一人の男の人が出てきた。そのとたん、雪乃が充の腕をふりはらって駆け出した。
「寄一!」
充はあとを追い駆けた。男の人は黙ってその場を見ていた。
最初のコメントを投稿しよう!