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雪乃は近くの公園で足を止めた。もう、辺りは暗くなってきている。雪乃はブランコに腰掛けた。間違いなく、あれは前住んでいた家。そしてあの人は…。
ガサッ
人が歩いてくる音。人影が見えた。
「吉村くん。ごめん。さっきは逃げちゃったりして…。」
雪乃は相手のほうを見ずに話しはじめた。
「信じられなかったの。あの家にいたなんて…。前は空っぽだったのに…。」
悲しげに呟く。
「前、本当は会ったことがあったの。私、一生懸命手を振って、呼んだの。お父さん!お母さん!って。…でも、目も合わさずに通り過ぎていったの…。」
雪乃の目から涙が流れた。
「私、何も言えなくって…。本当に離れちゃったんだなって…。だから、自分から向き合えなくなっちゃって…。ごめんね。せっかく連れてきてくれたの…に…。」
はじめて相手のほうを見た瞬間、言葉がとまった。そこには充じゃない人が立っていた。
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