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父親は語りはじめた。
「私たちは決めていました。子供が産まれたら頭のいい子に育てよう、と。私はこの会社を設営するのに大変な努力がいりました。苦労することが多かった…。だから雪乃を頭のいい子に育て、将来苦労しないようにしてあげようと思いました。…でも。」
「雪乃は全く勉強に手をつけようとはしませんでした。そのかわり…。」
父親に代わって母親が話しはじめ、いったんひと呼吸おく。
「私にも主人にもない、『絵』の才能があったのです。」
雪乃を見て母親が言う。雪乃はびくっと反応する。
「最初はよかったんです。新しい才能が生まれたんだと思いました。…でも、小学校に入ってからずっと休みがないほど絵を描き、賞状をもらい、だんだん怖くなってきたんです…。本当にこの子は家の子なのかと思うようになって…。そのうち、雪乃の顔を見るのも怖くなって…。あの日、逃げ出してしまいました…。」
母親は泣き崩れ、地面にしゃがみこんだ。雪乃は複雑な顔をしていた。
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