【エルアーク】

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◇朧げな選択◇ -5- 「ーーお聞きなさいな」 その感触に意識が少しだけ浮上し、柔らかな少女の声が、眠りの海の底へと沈みかけていた○○の頭の芯に辛うじて届いた。 「貴方の前には今、二つの夢があります。折角の初”記名”です。どちらに挿入するか、貴方がお選びになってくださいな」 そっと彼女の手が○○の手と重なる。硬い感触に○○が視線を向ければ、少女は小さな剣を象った奇妙な品を、○○の掌へと滑り込ませていた。 ○○が反射的にそれを握り込むと同時。靄の掛かっていた視界がクリアになり、そして頭の中に二つのイメージが浮かび上がる。 最初に浮かんだ光景は、夜の荒野に独り立ち、空を見上げる少年の姿。 次に浮かんだ光景は、闇色に沈んだ街の一角、不思議な影を従えた少女の姿。 傍に居た金髪の少女の姿がふわりと踊り、もう一つの大きな人影――まるでブリキ人形のような外見をした巨人の隣に着地。そしてゆっくりとこちらを振り返ると、 「さぁ、どちらになさいます?」 先刻過ぎった二つのイメージ。 より、印象に残ったのは――。image=264650521.jpg
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