第一章 

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「赤麗(セキレイ)? 何だそりゃ?」 スクライド本国に戻った樹楊は、城下町にある一軒の酒場の隅で、友のアギと勝ち戦を祝っていた。 アラサード・ギギト。 通称アギ。 年齢は樹楊と同じで十七歳だが、小隊長を任せられるほどの腕を持つランサーである。 アギは寸胴なグラスに入ったブランデーを一口飲むと「知らんのか?」と訊き返してくる。 「知らん、そんな怪しい部隊」 樹楊は異常な盛り上がりを見せる店内を一瞥しながら返し、樹楊の心情を察したアギが苦笑しながら宥める。 「まぁ、仕方ないだろう。あのクルードを退けたんだ。騒ぐのも無理はない」 金色の髪を掻き上げて、優しい碧眼で見てくる。戦ともなれば鬼の様な剣幕をするくせに、普段は柔らかな面持ちのアギに、樹楊は仕方なくといった感じで頷く。 「で、その赤麗ってなんだ? 今日の戦はそいつらの力のお陰らしいけど」 アギは、あぁと頷くとグラスを置いて思いに更けるように口を開いた。 「赤麗ってのは、十人編成からなる傭兵みたいなモンだ」
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