第一章 

12/35
前へ
/832ページ
次へ
「キョウ、赤麗を雇う事が何を意味するのか解ってるのか?」  キョウじゃなくて、キヨウだっつーの。  と、突っ込んでいたのは十年も前で、今となってはあだ名のキョウと呼ばれるのが自然となっていた。  樹楊は「さぁね」と興味無さそうに酒を飲む。 「赤麗は大金でしか動かないらしい。今回奴等に積んだ額は一年雇用契約で三億ギラだ」 「さっ、三億!?」  樹楊の渾身の叫びは酒場の隅々に行き渡り皆振り向いてくるが、何もない事を確認すると各々の話で再度盛り上がりを見せた。  樹楊はそんな事も知らず、金の勘定に入っている。  自分の月の俸給は三〇万ギラ。  これは国に仕える剣士以外の一般人の平均月収だ。一年で約三六〇万ギラ。  これの約百倍の額を赤麗は受け取っている。  一人当たりにしても、樹楊の年収の十倍近くになる。  しかしアギは 「奴等が貰う額などどうでもいい」と呟く。
/832ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16426人が本棚に入れています
本棚に追加