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アギは他人事のようにカラカラ笑い、肩を叩いてくる。大方、素行を正すようにと言いたいのだろう。
樹楊は鼻を鳴らすと、おつまみの乾燥豆を指で弾いてアギにぶつける。
「いてっ。それが小隊長に対する態度か、ったく」
そう言いながらも笑顔を見せるアギ。
「気ぃつけろったってな、その首領とやらの特徴が解らんとどうしようもないだろーが」
「あぁ、それなら簡単だ。赤麗って部隊名の通り、髪も剣も真っ赤らしいからな。人目で解るだろうよ」
髪も、剣も……?
アギの言い方からすれば、その特徴を持つ者は一人だという事だ。そうなれば、昼間に剣を捨てろと言ってきた奴が……。
「あれ? アンタ、まだ剣士のつもり?」
背後から聞こえてくる声は、明らかに自分に向けられた言葉。自分にはスクライド国内の酒場で出会うような女の知人は居ない。
だが、振り返らなくても解る。
忘れたくても忘れられそうにもない、この澄んだ声は、間違いなくアイツだ。
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