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「あぁ! もう、何なのよっ。このポンコツ!」
ざんざんと雨が降りしきる森の中、深紅の長衣を纏っている少女は軍用バイクの横っ面に蹴りを見舞う。
少女、というのは背の丈・声音が判断材料であり、実際の所は深く被っているフードの所為で、最後の判断材料の顔が見えていない。
フードの傘から僅かに出ている鼻の頭が、少しだけ赤みを帯びている。
「ったく、やっぱりこの旧式じゃ全然役に立たないわね。もう少し慎重にパクって――じゃない、拾えば良かった」
誰も聞いていないのに言い直す少女は長嘆し、視界を遮る大雨に鬱陶しさを感じながらも歩き出す。
背には革のホルダーに収められた剣。
柄の部分は長衣と同じく深紅。
剣士、なのだろうか。
持って来ていた地図もいつの間にやら紛失していて、少女は徒労感で満たされた。
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