第一章 

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やっぱり間違いだった。 いくら安定しているからとは言え、自分の身の丈に合った仕事をするべきだった、と、樹楊(キヨウ)は買ったばかりのショートソードを前に掲げて苦笑いをする。 「やっと追い詰めたぜ。手間取らせやがって、この雑魚が」 樹楊を見下ろしながら吐き捨てるのは、無骨な鎧を纏ったスキンヘッドの大男。 その後方にはスキンヘッドの部下二名が剣を構えながら薄ら笑いを浮かべている。 雑魚呼ばわりをされた樹楊は燃え上がる怒りの炎をたぎらせて剣を振るう、わけなどなく、目の前のハゲ頭を怒らせないように気を使っていた。 しかし、この状況はどう打破するべきか。 剣士らしく、腕で勝負。 大男の鎧は、戦の古傷が無数にも刻まれている。恐らく、何度も死地を潜り抜けてきた戦士なのだろう。 対する自分は…… かったばかりの剣。 歯こぼれなし、今日もピカピカ。
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