朝日

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 暗い森の中を、ひたすら駆け巡る。視界は出鱈目(でたらめ)に生い茂った木々によって阻まれ、良好とは言えない。  時間的には夜なのだろうか。木々の隙間から、淡い黄色の光が差し込まれている。世間一般では月の光と書いて、“月光”と読むらしいが、俺にはそれがとても神秘的な――お伽(とぎ)話に出て来そうな――そんな光景に思えた。  暫く、何の宛てもなく森の中をさまよっていると、少し広い場所へと出て来た。そこはキャンプ場なのか……薪(まき)で火を起こした跡が見受けられ、地面には杭を刺したような跡が残っていたのだ。 「……今日は、ここで休む事にするか」  誰もいない森の中で、独り言のようにそう呟き、俺は着火源となる薪を探しに行く。しかし……―― 「ん……?」  歩いている道の先にヒトらしき姿を確認し、直ぐに立ち止まった。目を凝らして何者であるかを特定しようとするが、何分視界が悪い為、姿だけしか確認する事が出来ない。
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