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俺は父の遺体を見た訳じゃない。ただ漠然と、父の死を告げられただけ。もし父が生きていて、貴也と共謀しているのだと考えると、何点かに関しては説明がつく。
(分からない事だらけだよな、本当に……)
だが、何もかもがあやふやで、憶測の域を越える事はない。だから、今は深く考えない事にした。
俺は彼女に微笑みかけ、その肩に手を置く。
「とにかく、その件についてはラウル達……情報屋に調べてもらうって事で、この話は終わりだ。さて、今度は俺の用事に付き合ってもらうぞ、シア?」
「うん、いいけど……何?」
「ま、行ってみれば分かるさ」
そう言って俺はシアから離れ、先導するように花畑の道を歩き出す。
少し歩いた先にある小さな店屋の前で立ち止まり、店頭に飾られている花に目を向けた。シアはその横で、なるほど……と言うように頷き、すぐに怪訝そうに顔をしかめる。
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