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今こそ、話すべきではないだろうか……そんな想いが脳裏を過ぎり、俺は意を決するようにシアを振り向かせる。しかし、俺が話をしようとしたところで、彼女は意外な一言を呟いたのであった。
「おにいちゃんって、何処と無く麻里奈に似てる……」
「え……?」
「見た目とかは全然だけど、その……何にでも一生懸命なところとか」
そうして彼女は踵を返し、大木の根元まで歩いていく。
「……初めて会った日の事、覚えてる?」
その言葉を聞いて、俺は廃屋での出来事を思い出した。あれはそう、雨が降りしきっていた時の事だ。雨宿りをしようと廃屋に入り込んだところで、偶然ではあったが、彼女と出会ったのである。
今思うと、その時から俺の周りでは何かが、慌ただしく動き始めていたのではないだろうか。それを不思議に思い、俺は彼女に尋ねてみる事にした。
「なあ、シア。お前……俺の事をずっと見てたのか?」
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