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「我が儘だなんて、そんな……俺も、何だかんだで楽しめたから構わないよ」
「うん……そうだね。そう言ってもらえると、何だか安心しちゃう」
「シア……?」
俺が名を呟くと同時に彼女は微笑み、ぎこちなく身体を左右に揺らし始める。
「あたしね、不安だったの。こうして、おにいちゃんとはもう……会えなくなってしまいそうで」
(え……っ!?)
その一言を聞いた瞬間、プツリと心の糸が切れたような気がした。同時に、今朝見た夢の出来事が浮かび上がってくる。
次々と殺されていく仲間――顔までは見えなかったが、恐らくはそうなのかもしれない。そして結末は、俺一人だけが佇み、その地獄を眺めている……というもの。
俺が見た夢と、シアの抱える不安が同一であるとすれば、ただ事ではない。否――これから先に、起こりえる事なのかもしれないのだ。
しかし、その事をシアに話すつもりはない。俺と共にいる事で不安が消えてしまったのなら、それを掘り起こす必要はないからだ。
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