小休止

31/34
前へ
/1022ページ
次へ
「我が儘だなんて、そんな……俺も、何だかんだで楽しめたから構わないよ」 「うん……そうだね。そう言ってもらえると、何だか安心しちゃう」 「シア……?」  俺が名を呟くと同時に彼女は微笑み、ぎこちなく身体を左右に揺らし始める。 「あたしね、不安だったの。こうして、おにいちゃんとはもう……会えなくなってしまいそうで」 (え……っ!?)  その一言を聞いた瞬間、プツリと心の糸が切れたような気がした。同時に、今朝見た夢の出来事が浮かび上がってくる。  次々と殺されていく仲間――顔までは見えなかったが、恐らくはそうなのかもしれない。そして結末は、俺一人だけが佇み、その地獄を眺めている……というもの。  俺が見た夢と、シアの抱える不安が同一であるとすれば、ただ事ではない。否――これから先に、起こりえる事なのかもしれないのだ。  しかし、その事をシアに話すつもりはない。俺と共にいる事で不安が消えてしまったのなら、それを掘り起こす必要はないからだ。
/1022ページ

最初のコメントを投稿しよう!

710人が本棚に入れています
本棚に追加