小休止

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「……あんまり、不吉な事は言うもんじゃないぞ?」  俺は妹を宥める兄にでもなったかのように、そう語り掛ける。シアはまだ心配そうに表情を険しくさせ、「でも……」と呟いた。なるべく不安がらせないように、優しい口調で俺は続ける。 「まあ、何時どうなっても可笑しくない、このご時世だからな……不安になる気持ちも分かる。だからこそ、お前には笑っていて欲しいんだ。お前が不安そうにしてたら、周りの連中だって不安になっちまうだろ?」 「おにいちゃん……」 「それに、大事な”妹”がそんな顔してたら、俺だって悲しいんだぞ? だから、な?」 「……――おにいちゃん!」  途端にシアは顔を綻ばせ、不安を全て吹き飛ばしたかのように表情を明るくさせた。その理由は分かる。恐らく、俺が彼女に対し、”妹”だと発したからなのだろう。それが彼女にとっては嬉しい事だったのかもしれない。俺からすれば、少しでも安心して欲しいが為に発したものではあったのだが。
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