小休止

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 俺は知ってしまったから……彼女達の運命を変えた張本人が、父――朱崎誠実である事。そして、その業を息子の俺が背負っていかなければならない事を。彼女の墓前に立ちたいと思ったのは、そういった想いもあったからだ。  シアに話した理由は建前に過ぎないが、嘘ではない。故に、俺は知らなければならないのだ。俺の求める答えを導き出す為には、沢山のヒトの抱く宿業――その意味を。 「いいよ。麻里奈の墓参りにはいずれ行こうと思ってたし……一緒に行こっか、おにいちゃん」  シアは穏やかな口調でそう答え、俺の手をギュッと握り締めてきた。手を伝って感じる温もりに、俺の表情も自然と和らいでいく。  そうして、墓参り用の花を調達し、街外れにある墓地公園へと向かう俺達。時刻は、まもなく十七時になろうとしていた頃ではあったが、夏であるが故に空はまだ明るい。何本か電車を乗り換え、ようやく目的の場所へと辿り着く。生暖かい風が吹き抜ける中、俺達は足並みを揃えて公園の奥へと入っていった――  
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