虚空

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―1―  ”W.R.M”本部の置かれている地下都市――その中にひっそりと佇む廃ビル内では、一番隊の隊長であるウォード・グランハーツが苛立ちを隠せない面持ちで窓の外を見下ろしていた。  今回、彼等に告げられた作戦は、本部への侵攻の阻止と、コード”エノメイア”と呼ばれる大規模破壊兵器の発動。だが、前者はともかく、エノメイアに関する詳細だけは聞かされていなかった。それに対する憤りも勿論あったが、彼が不機嫌な理由はもう一つある。 (くっ……泣く子も黙る破壊者、ウォード・グランハーツが何で、影に徹さなきゃならねえんだよ?)  前線に出て戦う事が好きな彼にとって、影に徹する戦いは大の苦手であった。それが、今の状況を生み出した最大の要因なのである。  しかも、当の軍人達は侵入に手間取っているのか、未だにエージェント達との競り合いが続いていた。敵の足止めという名目で言えば、彼等はちゃんと責務を果たしてくれているので問題はないが、それで全てを割り切れる程に、彼の頭は柔軟ではない。
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