虚空

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 恐らく、彼のボルテージは爆発寸前にまで至っているだろう。それこそ、”W.R.M”に対し、反逆を企てようとしても不思議ではない。  だが、それ自体を行うつもりなど、彼には無かった。何故ならそれは、彼の死を意味するからだ。自分が一番隊を率いて事を起こしたとしても、その上には厄介な二番隊と三番隊がいる。しかも、三番隊は全員がコードナンバーの保持者――つまり、エリート集団なのである。  対し一番隊には、コードナンバーを持つ人間は、隊長であるウォードを含め、誰もいない。その時点で彼に太刀打ち出来る手段は存在しなかったのだ。  故に苛立つ。今の彼の衝動を抑えられる要素があるとすれば、それは闘争のみ。彼の望みとしては、軍の中でも優秀な人材だけが集まった部隊……例えば、”C.I.G”のような特務部隊と戦いたいという事。それさえ満たせば、後はどうでも良かったのである。  中国での戦いの折に、副隊長を務めていた男が特務部隊の隊長と交戦し、敗れたという報告があった。
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