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彼等は何かを待っているかのように近接から、後方から攻撃を仕掛け、的確にアレンの動作の隙を突いてくる。それが彼の思考を揺るがせ、冷静さを欠いていったのだ。
(やはり、この中には戦略的思考が優れている人間がいるな。恐らく、その者がこの場を守る将……)
この博物館に何があるのかは皆無だが、頭さえ叩けば戦局を覆せる……そう踏んだ彼は、掠り傷や少々の切り傷などを省みずに、敵の陣へと突っ込んでいく。その姿は正に獣――突然の機転に戸惑ったエージェント達は、統制を乱し、一斉に彼の懐へ飛び込んでいった。
「フン……!」
呆気なく乱れた彼等の陣形に対し、アレンは蔑みの視線を向けた後に、回し蹴りをエージェントの一人に食らわした。その反動で何人かがなし崩しに倒れ、混乱が一層増していく。
ここまで来れば、後は単純な流れ作業であった。迫り来る敵を払いのけ、道を開く。それが何度も繰り返されていく内に、部屋の中は血生臭さの漂う地獄絵図と化していた。
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