虚空

23/46
前へ
/1022ページ
次へ
 外に出ようと、雅人達が出て行った扉に手を掛け、開こうとしたところで、彼は再び周囲を警戒し始める。 「……誰だ?」  誰もいなくなった筈の部屋を見回しながら、彼は静かに口を開く。  その直後、もう一方の扉が爆発し、その中から一人の男が姿を現したのだ。ブロンドの短髪にサングラスを掛け、黒のスーツに身を包んだその男は、ヘビーマシンガンを両手で構えたままでこちらを見据えてくる。明らかに、他のエージェントとは異なる空気を、彼は放っていた。その姿に、アレンが額から汗を流したのは言うまでもない。 「お前が、彼等の頭か?」  ある種の恐怖に晒されながらも、アレンは彼から目を離す事はしなかった。  しかし、男は何も語らない。ただ無言で、無表情のままで――こちらをじっと見据えてくる。それが逆に、アレンの心を脅かす事となった。 (この男……出来る)  戦場において、感情の見えない人間程、恐ろしいものはない。このサングラスの男はそれに当て嵌まる。
/1022ページ

最初のコメントを投稿しよう!

710人が本棚に入れています
本棚に追加