始まりの雨

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いつも学校の準備は前日の夜のうちに行うので、身支度を終えれば後は登校するだけなのだが、さっき聞いた占いの内容がふと頭を過った。 「忘れ物に注意して下さい。」という言葉に引っ掛かりを覚える。 「そう言えば今日、何か持って行かなきゃいけなかったような気がするけど…?」 一人暮らしの弊害とも言える一人言をまたもや呟きながら、ふとベッドサイドに目を向けると、そこには今日が返却期限の本が置いてあった。 「やばっ、今日学校帰りに図書館寄らなきゃ!…占いも捨てたもんじゃないなぁ…」 日頃は気にも留めない占いに感謝をしながら、鞄と本を入れた紙袋、そして家の鍵を持って慌てて家を後にした。 「いってきまーす!」 誰も居なくても習慣となっている挨拶をして、恵利は一目散に学校へと駆け出した。 急がなければ、自分の細やかな自慢である中1から続いている連続皆勤賞記録が途絶えてしまう。 しかし、忘れていたことを思い出すと、覚えていたことを忘れてしまうという、駄目なところが人にはあるもので、 恵利にとってこの日のそれは、だいぶ後で気付くことになる、玄関に用意してあったほっそりと畳まれた折り畳み傘であった。
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