1.何でもアリな我が一族

2/13
前へ
/92ページ
次へ
こんなはずではなかった。 呻き声を上げながら、頭の片隅では逃げる裁断を巡らせていた。 こんなことになるのならば、あの時、あの夢の中で、あのガキの息の根を止めておくのだった。 額に血の筋が伝う。 目に滲み、余計に惨めな思いがした。   なぜ、あの時! 本気で殺そうと思えばできたはずだ。 多少傷は負うかもしれない。 だが、可能だった。 あの時、そうしていれば今頃、自分はこんなにも惨めな思いをしなくとも済んだはずだ。   目の前の少女は存在せず、あの時のあのガキの肉を喰らい、数百年分の自慢話のタネを作っているはずだった。 だが、どうしてこうも運命は狂ってしまったのだろう。  
/92ページ

最初のコメントを投稿しよう!

151人が本棚に入れています
本棚に追加