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こんなはずではなかった。
呻き声を上げながら、頭の片隅では逃げる裁断を巡らせていた。
こんなことになるのならば、あの時、あの夢の中で、あのガキの息の根を止めておくのだった。
額に血の筋が伝う。
目に滲み、余計に惨めな思いがした。
なぜ、あの時!
本気で殺そうと思えばできたはずだ。
多少傷は負うかもしれない。
だが、可能だった。
あの時、そうしていれば今頃、自分はこんなにも惨めな思いをしなくとも済んだはずだ。
目の前の少女は存在せず、あの時のあのガキの肉を喰らい、数百年分の自慢話のタネを作っているはずだった。
だが、どうしてこうも運命は狂ってしまったのだろう。
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