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まったくもって愉快である。
直久はカラカラと音を立ててドアを引き開けると、職員室から出てきた。
長い廊下を行く。
担任の天変地異を目前にしたかのような顔を思い出して、笑いが込み上げてきた。
くふっ、と息を漏らすと、背後から気味が悪いと声がかかった。
木村史宏。
背の高い彼は、一見、『ひょろり』という擬音語が似合いそうな少年だ。
だが、つい数ヶ月前までバスケ部部長であった彼は意外にも『脱ぐとスゴイ』のである。
いや、そんなことはともかく!
直久は木村に振り返り、ニッと歯を見せた。
相手がいるのであれば、笑いを堪えなくとも不気味ではない。
「職員室に呼ばれたと聞いたから、さぞ、へこまされて出てくるかと思えば、ニマニマしながら出てくるし」
「説教を受けていたわけじゃねーもん。――お前は? 面談終わった?」
「終わった。終わった。――そっちは? 無事、カンニング疑惑は晴れた?」
「この顔を見れば分かるだろう?」
「信じらんねー」
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