闇無き闇

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「わざわざ僕に会ってくれて、ありがとう」 す、と礼儀正しく、男は頭を下げた。 男の名は、無闇頼無(むやみよりなし)。 黒い、うねった髪は足元まで伸びていて、身長は高め。 そして上半身は、どこかの学校の、女子の制服を着ている。 鮮やかな赤い蝶ネクタイ。 それ以外は、別にどこにでもいる、普通の男のように見える。 印象は、クール。 しかし話によると、どうやら異能力科の生徒、ということなので、おそらく、何かしら人外的な、有害な、異端の力があるのだろう。 勇はそんなことより、と苛立たしげに話をきりだす。 「無闇っつったか……一体俺に、何の用だ?」 ギラギラと貫くように輝く眼光に、しかし無闇は身じろぎもせず、静かに頷いた。 気が強い、というよりは、全く意に介していない様子。 視線に苛立ちがこもっているのに、気づいていないのかもしれない。 「ふむ。 用事というのは他でもない、人捜しを頼みたい」
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