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「人捜し、だあ?」
勇は呆れたように、大袈裟に肩を竦めて見せ、無闇を見下すように、しかし身長の関係で、見上げる状態になる。
「おいおい、この俺早瀬勇に、なんつー依頼をしてんだよ。 人捜しだ? この俺が? んなもん、せんせーにでも頼んどけってーの」
「ふむ。 しかし僕は、君達が春の殺人事件を、ものの見事に、名探偵さながらに解決したと、そう聞いた。 行方不明の姉――愛思(いとし)姉さんは、事件の被害者の、伊勿船漕の友人だったから、とても素晴らしい名探偵だと、絶賛しているのをきいた。 会ったことも無いだろうに、いつも愛思姉さんは、惚れっぽく、他人の良いところしか見ない癖がある。 困った姉さんだ」
「困ったのはお前じゃないのか……?」
早紀は思わず、本音をもらしてしまった。 後半は姉の話ばかりで、結局何が言いたいのか、伝わらない。
「は――姉、ねぇ」
勇は腕を組み、目を瞑った。 そして片目で、無闇を見やる。
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