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それをのんびりと眺めて、早紀は思う。 勇が番長となって暴力を振るっているお陰で、本来纏まらないはずの、異様で、異質で、異端な社会的に人間失格なこのクラスがまとまっているのだろう。 力による統一。 悪の組織がやりそうなことだ。 そしてヒーローが、自由がどうのと劇的に叫んで、解放するのか。
心斗じゃあるまいし。
それにしても、勇の、あの勝利への拘り。 どうして勇は、この球技大会で、あそこまで必死に勝ちに拘るのか。 普段授業はサボる、午後登校の勇が、だ。
春に起きた事件での名探偵ぶりもそうだが、勇ははりきる方向がどこかズレている気がする。 やはり、武術家と善良な一般人とでは、考え方も根本で違うのだろうか。
「――ま、俺に言えたことじゃあないけどな」
んー、と早紀は軽くのびをして、顔を恨めしいくらいに晴れ渡った空を向けた。 青い。
「昼間は苦手だな」
目が眩む……そう呟いて、目をふせて昼寝を決め込もうとしたところで、ガサガサと背後の森の方から、何かが近づいて来る音が聞こえてきた。
日の光を手でよけて目を開けると、新菜と目があった。
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