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「あは――さぼり?」
「ああ、暑くてやってられねぇよ」
早紀の応えにあはは、と笑顔で返し、新菜は早紀の隣に、転ばないように、ぶつからないように、上下左右を確認して、周囲の音に聞き耳をたてて、更に精神を集中させ、ゆっくりと座り込む。
暑そうで、熱そうな、真っ黒いワンピース。 ポニーテールのような、ちょんまげのような、ただ縛っただけのような、黒いさらさらな髪。 やはり左腕のギプスや、眼帯、体中の絆創膏や包帯は健在で、超不幸体質は、一向に治りそうもない。 というか、実はただのドジっ娘なんじゃないだろうか。
……いや、ドジっ娘で人が死んだら、たまったものじゃないが。 早紀は取り敢えず目の前に現れた白い脚から目を逸らしつつ、頬を掻く。
「こんなに暑いのに、よくやるよ……新菜のクラス――異能力科も、頑張っちゃってるのか?」
「あー、何よ『頑張っちゃってる』って。 ちょっと上から目線で感じ悪いよっ!」
「別に……いや、頑張ることそれ自体は、人間らしくていいと思うぜ。 でも、頑張りたくない奴を巻き込むのは、やめてほしいかな」
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