一章

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「燈華、砥石くれ」 「ほら」 これまた何処から出したのか、砥石を渡す燈華。 「さて、コイツを……っと」 疾風を鞘から抜き、切っ先三寸(約九cm)から、刀身の中程まで。『物打』と呼ばれる、刀が最大の斬撃力を有する部位を、砥石でごく軽く磨る。 寝刃を合わせると言うのはこの行為を指す。 刃に鋸状の細かい傷を付けることで、対象への食い付きを増し、切れ味を高めるのだ。 刀によってはこの手法は逆効果になることもあるらしいが、翔は実際に使い比べた経験から寝刃を付けるようにしていた。それも常に自分の手で。
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